2022.  june　　

5〜6年ほど前だったか、子供達も大きくなり3LDKのマンションでは手狭になってきたゴギー家では、一戸建ての部屋がたくさんある家への引っ越しを考えていた。

不動産屋へ行き、色々と物件を見ていると、程良い便利な場所に建つ鉄筋コンクリート2階建ての賃貸住宅に目がとまった。

詳細を見ると9LDKの広さ。築50年と、少々古いが昭和風でレトロな雰囲気があったので、「これええやん」と即決で契約し、引っ越しを進めていった。

タンスや冷蔵庫などの大きな家財道具は引っ越し屋にまかせ、こまごまとした物を自分の車で運び込んだ。その家は昭和の叩き上げの社長が住んでいた邸宅で、広々とした庭の中央には池があり、今まで住んでいたマンションとは違った優雅な趣が感じられた。

ある夜、荷物を運び込むために大きな玄関の扉を開け真っ暗ななか、電灯を点けようとスイッチに手を伸ばした瞬間、天井に釣っていたオレンジ色の派手な照明器具がものすごい音を立てて床に落ち、火花を散らした。そしてまた静寂に包まれた。

俺は全身、氷水をぶっかけられたみたいに驚いたが不思議と怖くはなく、新しい住人をこの家が歓迎してくれてるんやな、というくらいの思いだったかも。

気をとりなおして照明を片付け、二階の和室の押し入れに荷物を運びこもうとした瞬間、シャツの胸ポケットに入れていたスマホのフラッシュライトの閃光が走り、「カシャッ」というシャッター音とともに何かが撮影された。スマホには指一本触れていなかったのに、である。俺は怪訝な表情でそのスマホをのぞき込んだ。

戦慄が走った。やはりこういう事があるのか！こういうものが存在するのか！

そのスマホの液晶画面には髷を結った頭から血を流し、苦痛に歪んだ表情で右上方を睨み付ける侍の姿がぼんやりと写っていた。サムライである。

「あ、これはあかんやつや」と感じ、そのデータは誰にも見せることなく即座に削除したが、俺の記憶にはしっかりと刻まれていた。

その家にはそれから2年程住んだが、これといって問題はなかった。

月日は流れ、今、俺は「サムライズ」のメンバーとして打楽器を担当している。思えば、あの時の侍の写真はこの事を、、、「サムライズ」に入るという事を示唆していたのではないか？

本当に個性豊かで素敵なサムライズのメンバー6人ひとり一人にこういった何気ない経緯があり、様々なタイミングや出来事が折り重なって音楽を紡いでいっていることが不思議であり、奇跡なんだなと再確認した今日この頃。サムライが繋いでくれたこのご縁を大切にしたいと思う。